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笹幸恵
2023.9.18 10:10日々の出来事

「一個大隊いや一個師団」の脈絡のなさ。

私は「軍隊の電文用紙」というLINEスタンプを使っている。
何か用件を伝えて「よろしくお願いします」というとき、

こんな感じで使う。

もくれんさんはウケてくれた。嬉しい。
倉持氏は以前「これ笹さんのデフォルトでしょ」と
小バカにしてきたので、スタンプをプレゼントしてやった。
使ってくれたら評価爆上がりなのだけど
スルーされている。


私の脳内が、比較的軍事色が強いのはわかっている。
戦友会などでは相も変わらず「糧秣」「作戦」「機動」
といった言葉でやりとりする(圧倒的に意味が通じる)し、
そのせいかキーボードの予測変換は
少々より少将、点線より転戦、大体より大隊が先にくる。

軍隊の電文は簡潔で、独特の言い回しも美しい。
が、これをネタだとわかる人にしかスタンプは送らない。
ツッコミ前提なのだ。
「簡潔で美しいから、SNSでの日常のやりとりはすべて軍隊の
電文調にせよ」とか言い出したら、途端にアナクロニズムだ。
現代には現代の表現がある。

さて、
先日のトッキーのブログ拝見。
「中等修身 女子用」を激推しする珍説女王・橋本琴絵

これには私ものけぞった。
戦後日本の中絶数は戦没者の約10倍、
そして「女子修身は国家の根本」って。
正気か。
まるで中絶が女だけの問題であるかの
ように捉えているようだけど、だいじょうぶ?

私のような脳内軍事の女でも、
戦時中と現代とでは時代が異なり、
何もかもがそのまま通用するとは思っていない。
今年の猛暑も、南方で戦った兵隊さんを思って耐えろ、
と自分に言い聞かせてみたって、
耐えられないものは耐えられない。
「女は女らしく」と言われたって、
「20代のうちに公務員と結婚するのが女の幸せ」と
いわれた息苦しさは忘れられない。

相手がどう受け取るか、という想像力もなければ、
自分に照らし合わせてどうか、といった内省も
一切できない橋本琴絵。
だから悠仁さまのお世継ぎづくりに
「全国から若く健康な女性たちを公募し、
一個大隊いや一個師団の妊婦となり、
もって後胤と皇室の安泰としたい」
などと、壮大な「女は産む機械」発言をする。
時代がかった言い回しは、倉山満のオンナ版か。
ともかく古くさい表現で「何かを言った気になる」病(重症)。

ちなみに1個師団の編制はこんな感じ。

『日本陸海軍事典』原剛・安岡昭男 新人物往来社

何が言いたいかというと、
「一個大隊いや一個師団」という表現が
いかに脈絡がないかということ。
一般的に言えば「800人いや1万人」となる。
ちょっと数字が飛躍し過ぎでしょ?
師団の編制が頭に入っている人なら、
絶対にこんな使い方はしない。
また、一般的な作戦経過を辿るときなどは師団、
あるいは聯隊レベルがほとんどで、大隊はあまり用いられない。
要するに、とりあえず知っている単語を並べているようにしか
思えないのだ。

私のスタンプ同様、ツッコミ前提の物言い?
・・・なわけがない。
やっぱりアナクロで何かを言いたいだけ、なのだ。
笹幸恵

昭和49年、神奈川県生まれ。ジャーナリスト。大妻女子大学短期大学部卒業後、出版社の編集記者を経て、平成13年にフリーとなる。国内外の戦争遺跡巡りや、戦場となった地への慰霊巡拝などを続け、大東亜戦争をテーマにした記事や書籍を発表。現在は、戦友会である「全国ソロモン会」常任理事を務める。戦争経験者の講演会を中心とする近現代史研究会(PandA会)主宰。大妻女子大学非常勤講師。國學院大學大学院文学研究科博士前期課程修了(歴史学修士)。著書に『女ひとり玉砕の島を行く』(文藝春秋)、『「白紙召集」で散る-軍属たちのガダルカナル戦記』(新潮社)、『「日本男児」という生き方』(草思社)、『沖縄戦 二十四歳の大隊長』(学研パブリッシング)など。

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